葬儀と告別式 ②
葬儀と告別式の流れ
まず、式場一切のかざりつけや用意は、お寺さんと葬儀社で全部行ないますので、要望などを伝えてお任せするのが良いでしょう。例えば、供花一つにしましても、花輪・樒(しきみ)・生花など地域によって違いがあります。
花輪や樒は入口に近い所から、生花は棺に近い所から、故人と血縁の濃い順番、生前の縁の深い順番にならべます。このような事もお寺さんと葬儀社が一切心得ています。多くの場合、今日では、葬儀(死者をあの世へ送る儀式)と告別式(死者に最後のお別れをする式)とを続けて一つの式として行う場合が殆どです。
(1)座席
定められた式場に入場したら、喪主と遺族、近親などは、喪主からはじまり、故人と血縁の濃い順番に座ります。式場は現在では葬儀社の会館で行なうことが多いのですが、菩提寺や故人の自宅で行なうこともあります。僧侶の席については、法式座配(ほっしきざはい)というきまった座り方にしたがって座られます。
また焼香台が、祭壇のすぐ前と、はなれた入口の所との二つに分かれてある時は、前の焼香台では遺族と近親やごく親しい関係の人が焼香を行い、一般会葬の方は入口の焼香台で焼香します。僧侶・会葬者が席についたところで、司会者は開式のことばをのべます。
(2)読経と引導(法号授与)
つづいて僧侶の読経がはじまります。この中で、死者の霊を霊山浄土へ送る儀式を行うわけですが、最も大切なものは「引導(いんどう)」です。これは導師が立って、死者の霊に向って法号(戒名)を授与し、仏教の教えに従ってこの俗世間の迷いからさめて、さとりの境地に到達する道を導き示す儀式です。
(3)「故人の声」[故人の俤(おもかげ)」
式中に、喪主や葬儀委員などの意向により、或いは時によっては故人の遺言による希望により、生前に録音や撮影してあった「故人の声」や「故人の俤」などを式場に紹介して、ありし日の故人を偲ぶ事もあります。
この時、故人の遺言や辞世の歌を、近親、知人、友人などへのお別れの言葉として、故人の声でそのまま流す事もあります。
(4)弔辞、弔電
弔辞とは、故人を悼む気持ちを表し贈る、お別れの言葉です。
縁起の悪い不吉なことを連想させるような言葉や、直接的な表現を避けて、だいたい3分程度(800〜1000字)くらいで故人との思い出や悲しみを伝えるのがよいでしょう。
また弔電とは、通夜や葬儀告別式へ参列できない場合に、お悔やみの気持ちを伝える電報の事です。送る際は通夜の開始より前に、遅くとも告別式当日までに手配いたしましょう。
(5)焼香
焼香とは、香を焚いて仏様や故人を供養する作法です。香を焚くことにより、心と体、そして場を清める意味もあります。宗派や式の時間により回数は1〜3回、抹香を摘み額に近づけて目の位置より高くかかげ、香炉の上に落とします。
また、焼香には「立礼焼香」「座礼焼香」「回し焼香」の3種類があります。
(6)火葬、骨上げ(収骨)
火葬は約一時間から二時間位かかります。その後、骨上げをします。この骨上げの作法は火葬場の係の人がよく教えてくれますので、別に前もってこまかい手順などを覚えておく必要はありません。この時に、僧侶が立ち会って読経することもあります。
(7)分骨
後日遺骨を納めるのに主なる墓所の外に、分骨して別におまつりする所がある時は、葬儀社なり、火葬場の係の人にはじめに分骨の事をたのんでおく事を忘れないようにして下さい。
(8)灰葬(還骨)
家に遺骨を迎えると、その時には、葬儀社の係が小さな遺骨供養をする祭壇を用意していますので、その祭壇に遺骨をおまつりして、ここでお寺さんの読経をしてもらいます。これを「灰葬(はいそう)」または「還骨 (かんこつ)」といいます。
この「灰葬」とは、昔は故人を送って葬った野辺で行う読経回向の事でしたが、今では、この
ように家に帰ってから、新しい仏の遺骨に向って読経回向する事をいうようになりました。また場合によってはこの時お寺に行って読経回向する地方もあって、これも灰葬と言っています。
(9)お供養~精進(しょうじん)落し
骨上げ、灰葬が終わった後、葬儀に参列してくれた方々にお酒や食事などを用意しておもてなしをする事を、お供養とも、精進落しともいいます。
「精進」とは仏教の言葉で、悪い心を捨て、善い心を興し、仏道修行に励むことをいいます。しかしこれが段々と変化して、一定の期間食事から酒肉を断つことを指すようにもなりました。平安時代の書物には「斎精進(いもそうじ)」(宇津保物語)、「斎ひ(いもい)」(竹取物語)などと記述があります。
精進につとめ故人の冥福を祈り、忌日の期間が終わると「精進落とし」といって、普通日常の生活にもどります。これを「精進明け」とも「精進はらい」、「俎直し(まないたなおし)」などともいいます。
葬儀は誰にとっても、一生に何回もあることではない特別な儀式であります。判らないことは当然ですから、些細なことでもお寺さんや葬儀社などにお聞きすればよいと思います。
大事なことは、故人をこの世から、霊山浄土にお送りする最期の儀式であるということであり、故人を偲びながら誠意を込めてつとめることです。
“仏事あれこれ”については、総本山妙満寺第302世貫首 古瀬堅徳(日宇)猊下(1917~2003)著書、『法事と戒名のすべて』(有)技興社発行を参考に掲載しています。